公開日 2025年03月28日
更新日 2025年03月28日
はじめに
久米島町では、2019年まで毎年猫に関する苦情相談が数多く寄せられておりました、2020年より繫殖抑制事業を開始しましたが、現在においても猫による生活環境への被害が多数発生しています。
野良猫の多くは栄養価の高い餌を与えられ、健康状態や繁殖能力が向上していくとともに、飼い猫の遺棄と相まって、その数を増やしていきました。その結果、猫に関する苦情や、行政対応を求める声が特に多くなっています。野良猫は現代社会の産物であることから、人間が責任ある行動と管理を徹底していくことが、野良猫問題を解決していく上で必要です。
環境省等の調査によると、飼い主の約2割弱が飼い猫の不妊去勢手術を実施していませんが、このことは多頭飼育問題、遺棄、殺処分といった重大な結果を招く一因となっていると推測されるため、野良猫だけでなく飼い猫の適正飼養を進めることも、猫にまつわる問題解決への一歩となります。
久米島町では、猫に関する近隣間のトラブルの減少を目的として、適正飼養の普及啓発を図り、繁殖抑制事業への取組、支援を行っております。
猫の定義
飼い猫と野良猫の違いは、『所有・占有の意思を持って、継続的に餌や水を与え世話をしている特定の飼い主』がいるか否かであり、猫の状態により次のように分類されると考えられます。
1.飼い猫
特定の飼い主が存在する猫。
所有・占有の意思を持って、継続的に給餌給水等の世話をされている猫のことを指します。
(1)内猫
屋内のみで飼養されている猫。
猫は縄張りを大切にし、屋内を縄張りと認識するとその中で健康で安全に日常生活を送ることができます。また、ふん尿などで近隣に迷惑をかけることもありません。
(2)外猫
ア 出入自由猫
屋内飼養が基本ですが、屋外を自由に散策させる飼養形態の猫。
猫を屋外に出すことにより、猫がふん尿などで近隣に迷惑をかけたり、病気や事故に遭遇したりする危険性が高まります。また、不妊去勢手術が施されていない場合には、野良猫を生み出す要因になってしまいます。
イ 庭猫
飼い主は所有の意思を持って、継続的に給餌給水して世話をしていますが、屋内には一切入れず飼養されている猫。
出入自由猫と同様に、ふん尿により近隣に迷惑をかけてしまう上、飼い主は猫自身の健康と安全についても関心が低い傾向にあります。不妊去勢手術が施されていない場合が多く、野良猫を生み出す要因になってしまいます。
2.野良猫
特定の飼い主が存在せず、屋外で生活する猫。
全ては無責任な飼い主による「捨て猫」「不適切飼養」に端を発しています。栄養状態が悪いことが多く、病気や事故などにより比較的短命です。
(1)世話猫
一部の住民が継続的に給餌給水等の世話をしている猫。
多くは不妊去勢手術が施されていますが、地域住民に認知されていないため、地域住民から嫌われてしまう場合が多くみられます。また、世話をしている人には、所有・占有しているという明確な意思はありません。
(2)餌付け猫
一部の住民が継続的に給餌給水のみをしている猫。(不特定の人が不定期に餌やりする場合もあります。)
不妊去勢手術が施されていないため、野良猫が増える原因となっています。当然地域住民に認知されていないため、地域でトラブルを引き起こすことがあります。また、置き餌がカラスやアリを集める等、他の生活被害の引き金になることもあります。
地域猫
特定の飼い主はいないが、地域環境の向上を目的に、ボランティアや地域住民等によって適切に管理されている特定の地域の猫。
地域住民の理解のもと、対象の猫を把握するとともに、餌の管理、不妊去勢手術の徹底、ふん尿の始末、周辺美化など一定のルールに基づいて適切に管理し、野良猫の数を今以上に増やさず、一代限りの生を全うさせる猫を指します。
(注意)実際に世話をしていなくても、その趣旨を理解して見守ることも「地域での管理」に含まれます。
ノネコ
他の野生動物等を捕食して生息している完全に野生化した猫
猫にまつわる解決への歩み
1.はじめに
猫に関するトラブルをなくすためには、猫を適正に飼養・管理し、人と猫が共生する環境をつくりながら、野良猫を減らすための対策を講じていくことが大切です。
久米島町では、猫の不妊去勢手術の必要性を普及啓発するため、島外から獣医師を誘致し、安価での不妊手術キャンペーン実施、また、保護猫活動への取組支援を行っています。
2.飼い猫の適正飼養ルール
猫はおとなしく、さまざまなライフスタイルに適応することが可能なため、適正飼養することで都市生活の中でもペットとして快適に暮らせる動物です。
(1)屋内飼養をしましょう
猫を屋内で飼養することによって、近隣への生活環境被害を未然に防ぐことができるとともに、交通事故や感染症の危険から猫自身を守ることができます。室内を縄張りと認識し、そこを生活場所とすることは猫にとって安全なことであるとともに、飼い主にとっても一緒に過ごす時間が増え、より親密な関係を築くことで安らぎや喜びを得る機会が増えます。
猫の習性をよく理解し、不妊去勢手術を施し、環境を整えれば、屋内飼育は十分可能です。
(2)不妊去勢手術をしましょう
不妊去勢手術を行うことで、望まれずに処分される子猫を生み出すことを防止できると同時に、猫特有の問題行動を抑える効果があるといわれています。特にオスにおいては、放浪癖、けんか、尿スプレー等を抑止する効果があります。また、生殖器等の病気を未然に防ぎ、高齢になってからの治療や手術等の危険性を回避することが可能です。
猫の飼い主は、命ある動物の飼い主としての責任を自覚し、不妊去勢手術の必要性を認識するよう努めてください。最近の獣医療の進歩により、生後4か月位からでも不妊去勢手術が可能となりました。
(3)所有明示をしましょう
猫の所有者を明らかにすることは、飼い主としての社会的な責任を明確にすることになります。また、その猫に対する愛情の印でもあり、迷子時や事故に遭遇した際の緊急連絡にも役立ちます。
原則屋内飼いの猫でも、災害時など、万一の事態に備えて飼い主がすぐわかるように、外から見える迷子札に加えマイクロチップを挿入するといった二重の対策をとるようにしましょう。マイクロチップの挿入については、かかりつけの動物病院の獣医師にご相談ください。
(4)終生飼養をしましょう
日本の家庭で飼養されている猫の平均寿命は、10歳以上と推定されていますが、獣医療の進歩やバランスの取れた食事等によって寿命はさらに延びている傾向にあり、長寿の猫としては20歳以上のものも少なくありません。
自分のライフスタイルの少なくとも10~20年先まで考えてから飼い始めましょう。いずれは介護が必要になるかもしれないことも考慮し、最後まで面倒をみられるか、万が一自分が飼えなくなった場合に自分に代わって面倒を見てくれる人がいるかなどをよく考え、「飼わない」ということも責任ある選択肢の一つだと認識しましょう。
一旦飼ったならば、家族の一員として、その動物が命を終えるまで適切に飼養(終生飼養)することが大原則です。
「動物を捨てること=遺棄」は、動物の愛護及び管理に関する法律で禁止されており、罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の規定があります。【動物愛護管理法第44条第3項】
(5)近隣への配慮をしましょう
猫の毛やフケなどにアレルギー反応を起こす人もいます。
住宅が密集した地域やマンションなどでは、猫の毛が布団についた、食事中に猫の毛が入ってきたといったトラブルもあることから、ブラッシングは屋内で行いましょう。
(6)災害への備えを忘れずに
災害は突然起こります。いざというときのために、日頃からの備えが大切です。
- 久米島町では、避難所へのペット同伴での避難ができない場合もありますので、緊急時に猫を預かってくれる人を確保しておきましょう。
- 迷子札に加えマイクロチップを挿入するといった二重の対策をとりましょう。
- 各種ワクチンの接種及びノミ、ダニなどの予防や駆除等を行っておきましょう。
- ペットシーツやケージなど必要な用品を備蓄し、フードや水、薬等は最低でも5日分は用意しておきましょう。
- 避難時に備え、ケージに入ることに慣らしておきましょう。
3.野良猫対策
久米島町内にはノネコは存在しないものと考えられるため、全ての野良猫は不適切な飼養管理や遺棄に端を発しています。そして何らかの形で人との関わりを持ち、餌を与えられて生活しているものと推測されます。
これらの猫を取り巻いて、近隣住民間の関係が悪化してしまうのが、いわゆる「野良猫問題」です。猫の適正な管理を行わずに餌を与えるだけという行為が野良猫を増やし、猫によるトラブルの原因になっています。
野良猫問題は、飼い猫の終生飼養・屋内飼養・不妊去勢手術等の適正飼養が普及・徹底されれば、次第に解決していくものと考えられますが、現状の問題を解決するためには、野良猫の数を減らしていく努力と、既に存在している野良猫による被害を防止する両面の取組みが必要です。
(1)地域住民の理解
野良猫を排除するのではなく、地域住民の理解のもと、適正に管理していく活動で、「猫」の問題を「地域の環境問題」としてとらえ、地域計画として進めていくものです。地域住民と飼い主のいない猫との共生を目指し、飼い主のいない猫を減らし、地域環境の向上を目指します。ただし、実際に数を減らしていくためには複数年の時間を要すため、当面はこれ以上猫を増やさず地域の猫による被害を減らすことを目的に、一定のルールの下、活動組織が主導して活動していきます。特定の飼い主のいない猫を地域で管理することが、野良猫によるトラブルを無くすための試みであることを理解する必要があります。
(2)野良猫の管理方法
久米島町内には、完全な野良猫はあまり多くなく、殆どが複数の住民(民家)から、または特定の住民(民家)から餌を与えられている、前述の「世話猫」「餌付け猫」と定義付けされる、言わば「半野良」状態の猫が圧倒的大多数です。
ア 給餌方法__餌場をきちんと決めましょう。
所有地以外で餌を与える場合、その土地の所有者、管理者等の理解を得た上で周囲の状況を考慮し餌場を決め、その場所以外では餌や水を与えないようにしましょう。また、餌は決められた時間に必要な量を与え、食べ終わるのを待ってから残さと容器を回収し、付近の清掃を行うなど常に清潔を心がけましょう。場所と時間を一定にすることで、管理する猫がその時にだけ集まってくることになり、毎日の個体把握にも役立ちます。
置き餌は絶対にしないようにしましょう。カラスが寄ってきたり、ハエ・ゴキブリなどの害虫発生や悪臭の原因になったりするため、野良猫や地域猫への理解の妨げにもなります。
無秩序な餌やりを行う人がいる場合、不適切な方法での餌やりをしないよう協力を依頼しましょう。ただし、住民間トラブルに発展しないよう、役場担当課や活動団体に相談する事も検討しましょう。
餌として残飯を与えてしまうと、猫のふん尿による悪臭を誘発し、また、猫が人間の食べ物の味を知ることによりゴミなどをあさってしまう場合もあるので、与える餌はキャットフードだけにしましょう。
イ 猫のトイレ__猫のトイレを設置し排せつ物の管理をしましょう。
所有地以外で猫の餌やりをする場合での、土地の所有者、管理者等の理解を得た上でトイレを設置し、常に清潔を心がけましょう。決められたトイレ以外の排せつ物も管理の一環として片付けましょう。
排せつ物以外のゴミ等も積極的に片付け、周辺の環境美化を心がけましょう。
ウ 不妊去勢手術__不妊去勢手術を行い、これ以上増えないようにしましょう。
島内で実施される不妊手術キャンペーンを利用するか、沖縄本島の動物病院を利用して手術をしましょう、猫の捕獲や手術についての相談については、久米島町担当課、活動団体までお問い合わせください。
久米島町が実施するTNR活動では、手術済みの猫を識別する目的で、耳の先端をカットします。
エ 猫の管理状況の継続的な把握__個体管理に努めましょう。
餌を食べに来る猫の頭数及び不妊去勢手術の実施状況を把握し、新たに猫が現れた場合は、安易に餌を与えないようにしましょう、未手術の場合は速やかに不妊手術の手配をしましょう。
オ 猫の侵入防止策
猫が敷地内に入ってくることで困っている方向けに忌避方法を紹介します。猫よけに決定的と言える方法はありませんが、防止策を講じるにあたっては、餌やりをしている立場として、できる限り協力しましょう。
・ごみの処理を確実にして、荒らされないようにする。
・ふん尿をされた場所は確実に臭いを消すようにする。
・猫は水を嫌うので、通り道、ふんをする場所に水をまく。
・市販の猫専用忌避剤、酢、木酢液などを散布する。
・市販されている超音波発生器(センサーが猫をキャッチすると、猫が不快に感じる超音波を発する機器)などの猫よけグッズを使用して侵入を防ぐ。
猫の習性
1. 運動能力、感覚器官
(1)視覚
人間のように双眼視できるので、距離感を正確に判断することができます。色の識別能力は高くありませんが、わずかな光でも増幅できるので暗がりで物を見る能力にたけています。
(2)聴覚
耳の角度を変えることができるので、音源の方向を正確に把握できます。また、内耳器官が発達しているため平衡感覚に優れています。
(3)嗅覚
鋭い嗅覚を持っています。
匂いを嗅ぐことでコミュニケーションをとっています。
(4)触覚
口の周りや眼の上などに硬いヒゲが生えており、接触や振動に対して鋭敏です。狭いところを体が通り抜けられるか否かの判断にも役立っています。
2. 行動
(1)食性
原則的に肉食性です。人間と比べて、たんぱく質と脂質を非常に多く必要とします。ドックフードは猫にとっては必要な栄養素が欠ける為、猫に与えるのはキャットフードである必要があります。
(2)繁殖
オスは、生後6か月くらいから性行動が見られるようになります。温暖な沖縄では生後7〜9か月頃からオス特有の性行動(メスを求めた放浪癖、縄張り争いのけんか、マーキングの為の尿スプレー)が顕著になります。
メスは、最も早いと生後4か月くらいで発情兆候が見られるようになります。一般的に生後6か月頃には初発情を迎え、年3~4回発情し、発情期間は約1週間程度続きます。
猫は交尾排卵するため、交尾によって確実に妊娠します。妊娠期間は60日前後で、1回あたりのお産で平均5匹の子猫を産みます。時期によっては子猫が乳離れするとすぐに次の妊娠をすることもあります。発情しても交尾をしない場合は、3~4週間おきに発情します。
(3)社交性
生後4~8週令の時期に人や他の動物と接触しないと攻撃的になったり神経質になったりするといわれています。猫の行動範囲は狭く、主として自宅とその周辺程度が行動圏です。
猫は基本的に単独生活をする動物ですが、メスとその子供を中心としたコロニーを形成し、オスはそこに所属したり、他の集団に移動したりすることもあります。発情期になるとオスはメスを求めて行動圏を広げます。
一方、屋内飼育の猫は、家族と暮らす屋内が行動圏になります。猫は高い所に登る習性があるので、立体的に自由に運動ができれば、屋内という限られた状況でも暮らしていけます。
(4)トイレ
猫は花壇や砂場のような軟らかい土や砂の上に排せつすることを好み、自分が排せつした場所を発達した嗅覚でかぎ分けることで、決まった場所での排せつを繰り返す習性があります。この性質を利用して、特定の場所に排せつをするようにしつけることができます。
また、猫は餌場の近くを排せつ場所とすることが多いため、その周囲でふん尿被害を引き起こしがちです。世話をする頭数に見合った数のトイレを餌場周辺に設置するようにしましょう。
完全屋内飼いの猫の場合は、頭数+1個のトイレを設置することが望ましいと言われています。
(5)鳴き声
鳴き声は、親子や猫同士のコミュニケーションの手段として使われるほか、警戒・威嚇・闘争の表現にも使われます。発情中は、オスメス共に大声で鳴きながら徘徊します。
(6)マーキング行動
ア 擦り付け
顔や脇腹などを人間に擦り付ける行動は、安心や親愛の情を示していると考えられています。顔等から分泌される匂い物質を猫同士で擦り付けるのは、大切なコミュニケーションの一つでもあります。
イ 爪研ぎ
武器である爪を利用しやすい状態にしておく必要性から行われますがその他にも爪で傷をつける視覚的マーキングと足の裏から分泌される匂いをつける嗅覚的マーキングを同時に行なっています。
ウ 尿マーキング(尿スプレー)
行動圏を明らかにして自分の存在を誇示したり、不安を感じたりしたとき時に示す行動です。特にオスは、成熟すると尾を上げて柱などに尿を噴射して縄張りを主張します。去勢手術により90%近くがこの尿マーキングをやめると言われています。
(7)グルーミング
猫は、体をなめたり、前肢で顔を洗うような動作をしたりしますが、これは自分の匂いをかき消すための習性です。猫同士がなめあうのは、気の合った仲間であることを示しています。
人と動物の共通感染症
人と動物の共通感染症とは、動物から人へ、人から動物へ互いに感染する病気のことで、国内では、猫ひっかき病、パスツレラ症、皮膚糸状菌症(通称 猫カビ)等が発生しています。
また、久米島には、ノミを媒介する寄生虫や、コクシジム(原虫)に感染している猫が非常に多く、極まれに人間にも感染します。
これらの病気は猫を完全屋内飼いにすることによりかなり防ぐことができるものですが、さらに、次の点に注意が必要です。
- 猫への口移しや人と同じ食器で食べ物を与えない。
- 猫と口づけなどの過剰な接触をしない。
- 猫に触った後、飲食の前には手を洗う。
- 猫の排せつ物はすぐに片付け、処理の後は手を洗う。
- 猫の健康と衛生的な飼育環境を保つ。
久米島ねこ福祉・適正飼育推進協会
久米島町では、猫の適正飼育および繁殖抑制を推進し、町民の皆さまが快適に暮らせる環境づくりを目指しています。その一環として、町内で活動する久米島町認定団体「久米島ねこ福祉・適正飼育推進協会」が以下の取り組みを行っています。
- 飼い主のいない猫に対する繁殖抑制(TNR活動)
- 猫の適正飼育に関する啓発活動
本協会は、猫に関わる地域課題の解決に尽力しています。猫と人が共生できる町づくりにご協力をお願いいたします。